片恋
「・・・すっ、凄い時間・・・!」
『今日は5限までだから、
4時半過ぎには着けるかも。』
7時過ぎてるんですけど。。
何度も時刻表を見たり
時計を見たりしてたはずなのに、
全然認識してなかった自分に呆れ果てて
外の景色と同じくらい真っ暗な気持ちになる。
しかも、さむ・・・っ
最近はめっきり冷え込んで、
息が白くならないのが不思議なくらいだ。
風に飛ばされた新聞紙がやってきて、
バサッと足元にかぶさった。
まとわりつく新聞紙を蹴散らそうとして余計にからみつかれ、
仕方なく手で引き剥がしていたら、
後ろから来た人にぶつかられて転びかけて手をつく。
謝りながら起き上がって砂を払うと、
じゃりじゃりとした感触が手のひらで鈍く痛んだ。
もう、やだ。
泣きたい。
もう、全部やだよお。。
遼平君に会いたい。
うつむいてぎゅっと目を閉じて、
イライラを抑え込んだ。
強く唇を噛みしめる。
駅からは、そんなに遠くない。
会いたいんだから、会いに行こう。
私は顔を上げると、
睨みつけるように前を見据えた。
遼平君なら、きっと笑いながら
「大変だったね」って言ってくれる。
そうして遼平君と一緒に、
自分のマヌケさを笑い飛ばすんだ。
自己嫌悪に負けてる場合じゃない。
ゆっくりと、
遼平君の家に向かって足を踏み出す。
それから黙々と、
ひたすら足を動かして、
速度を上げて走り始めた。
遼平君に会うことだけが、
今の私を立て直す、唯一の方法だと思った。