天使みたいな死神に、恋をした

 やり残したことか。

 えーと……なんだっけ? 
 
 やり残したことって、なんだったっけ?

 すっごく重要なことだったと思うんだけど。

 誰かに会わなきゃいけなかったような……

 誰かが待っているような。ほら、また忘れた。
 
 長くここに居ちゃダメだ。このままじゃ完全に忘れちゃう。死神のことばに踊らされると考えていることが変わっちゃう。


「とりあえず、いいからルーインとこに行こう」
 
 そうしたら、思い出すはず。
 
 こう見えてやはり死神だ。真綿で首を絞めてくる。
 
 きっとルーインの方が真っ白い心を持っているに違いない。
 
 油断しちゃダメだ。

 アンジュラの顔を見ないで一人足早に家を出ようとして玄関を開けると、
 

 そこは暗黒の世界だった。息を飲んだ。固まった。

 地面が無い。出した足を降ろしたら私は地の底へと落ち行くだろう。

 しかし、為す術は無い。前に出てしまっている足はそのまま着地をするほかない。
 
 悲鳴は声にならず、息を止めるだけになり、ダメだ、落ちると感じたその瞬間、身体はふわりと宙に浮いた。

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