天使みたいな死神に、恋をした
「ルーイン!」
私の呼ぶ声にこっちを向き、軽く手を挙げ、アンジュラと何やら目で会話をしている。
「綠さんこんにちは」
笑顔で挨拶をしたけど、彼女は嫌そうな顔をして視線を反らしてしまった。
やはり私の読みは当たっていたのかもしれない。彼女はどうしても私になりたいんだ。
「おい、お前が言っていた通りこいつがお前に成り下がっていたのを確認した。俺のところでそんなことが通用するわけもないんだが。だからこいつを留め、こいつをこっちによこした野郎とも連絡をつけてだな、そいつは今向かってる。でだ、これで俺らのよくないアレも上に知られることはなくなったってわけだよ」
がさつに笑っているのに憎めないのはルーインが天使という専売特許を持っているからだろうか。
「それで、緑さんはどうなるの」
「お前と交換だ。お前は俺のところへ来て、こいつはアンジュラのところへ行ってもらう」
後ろにいるアンジュラが頷いたのが分かる。アンジュラをチラッと見た緑さんは、隠すことなく息を飲み、一瞬にして青くなり一歩後ろへ、ルーインのほうへ寄った。そりゃそうだ。アンジュラは死神だ。それを見たら誰でもそうなる。
「来るなよ」
あろうことかこの天使は下がってきた緑さんの背中をポンと押した。緑さんは肩を震わせながらルーインを振り返った。今、彼女の味方となる人はここに誰もいない。
「ちょっとルーイン、それやりすぎだからね」
思わず口から出たことばに緑さんは眉を八にした。
「綠さんをお借りしてもいいかな?」
「借りる? どこに行くつもりだ」
「えっと、私がいる病院」
しばらく考え込むルーインは私から目を反らさない。
私の後ろにいるアンジュラと丁度二人に挟まれる格好になっている。
ややしばしして頷きながら、『いいよ』と快い返事をくれてホッとした。
「じゃ、とりあえず行きましょう緑さん」
「……」
「綠さん、ここにいたい?」後ろのアンジュラを指さした。
「……い、いえ」
「でしょ。じゃさ、まず『私』に会ってみてくれないかな」
なぜ私に会わなければならないのか意味不明な事に一瞬『何?』って感じで私と視線を合わせた緑さんに笑いかけ、アンジュラに「行こう」と声をかけた。
アンジュラは頷き、ルーインも一緒に私たち4人は私が横たわる病院に向かうことでまとまった。
乗り気じゃないのは、綠さんただ一人だけだ。