天使みたいな死神に、恋をした
変な考えは取り除こう。アンジュラとどうこうなるとかそういうのやめよう。
よし、考え直してひとまずアンジュラが帰ってくるのを待つか。そのあとのことを考えよう。
テーブルについて、いつだったかアンジュラが出してくれた(イギリス王室の)紅茶っぽいのを飲み始めたところで、ドアをノックする音が聞こえた。
こんな地の果てにも訪問客がいるんだ。ここが死神の家だから尋ねてくるものもいるのかもしれないけど、今まではあの天使がノックもなしにいきなり現れていたからそれが普通なのかと思っていた。
『何があってもここから出ないで下さいね』
そんなことを言っていた気がするんだけど、一つ大きな問題があってね、
ここでは、記憶が曖昧になり、居ればいるほどに今までの記憶が無くなっていく。
開けろと最速するように慌ただしくノックをされるドアに向かって歩く私。
ルーイン? いや、ルーインだったらノックなんかしないでどこからともなく現れるはず。
変な興味と好奇心に惹かれ、私はドアに手を当てた。
ドアの外では真っ黒い人の形をしたどろっどろの焦げた塊が、口元であろうところだけ真っ赤にして、私が出てくるのを待ち構えていた。