天使みたいな死神に、恋をした
「天使とお酒ってものほど似合わないものはないよね」
「ちょっと待て」
「世の中の皆様はそう思ってるよ。天使ってこういいイメージだもん」
「それってあれだろ? サンタクロースが夏に何をしているかって話しと一緒じゃねーか」
「うん、話しずれてるしそんなこと誰も思ってないしそもそも話の傾向が変わってるけどちょっと気になった。何してるの?」
「サンタは夏の間は熱心にバイトをしてるんだよ」
「……やめて」
「いや、ほんとだ。サンタクロース振興協会ってもんがあってな、そことここは通じていて毎年クリスマスにはここにも、」
「そんな話し聞いたことない」
「言ってないから当たり前だ」
もう、何もこの天使には聞かない。
夢も希望もことごとく打ち消してくれる。サンタがバイト? 振興協会? そんなこと信じたくない。それに天使が酒を飲む? 無理無理無理。考えたくもない。
というわけで、私たちはルーイン管轄の広々とした空間(全てが真っ白いから特段変わり映えしないんだけど)
で、お酒を飲みつつ、私のさよならパーティーをすることになったってわけだ。
「ちょっと待て。だから、誰が酒の話をした? 誰も一言もそんなこと言ってねーぞ」
「ルーイン、自分で言ったことも忘れちゃうんだね。天使もそういうことってあるんだ。なんか私ほっとしちゃった」
「俺は、飲んでぱーっとやろうと言っただけだぞ。誰が酒の話をした?」
「だから飲んでぱーっとってこっちではお酒を飲んでぱーっとやるってことだよ。ここでもでしょ?」
「どこに酒って言葉が入ってる?」
普通、飲んでぱーっとって言ったらお酒でしょう。
でも、どうやらこの天使の頭の中ではそうじゃないらしいし、
「そもそもが、俺は酒なんてものは飲まない。アンジュラじゃあるまいし」
やはり天使は酒を飲まない。
そこだけでもはっきりできてホッとした気持ちにもなった。