天使みたいな死神に、恋をした
そうなるのは何十年も後の話かもしれない。
それに体に戻ったら私はここにいた記憶を全て失ってしまう。
忘れたくない。絶対に忘れたくない。
二人の姿はさっきからもう見えない。声しか聞こえない。
最後の最後のお願いに、二人に会って、ぎゅーっとしたかった。
涙が溢れてくるけど、どこかで見られてる気がするから無理矢理笑って、
『ありがとう!!』
直後、考える力をも剥ぎ取るほどのすごい力で後ろに吹っ飛ばされた。そんな風に身を全部任せながら、
笑って『ありがとう』を言った。
『最期だと悟った人間は最後に笑ってありがとうって言うんだよ』
ルーインが教えてくれた言葉が頭に落ちる。
ある意味、こっちの世界から出るってことだから、最後なのかもしれないな。
これで私、本当に戻っちゃうんだ。戻るんだ。
『あ、そうそう。アンジュラから土産があるそうだ。だか…………ぁ…………く、に…………』
薄れ行く意識の中で最後にルーインの声を聞いた気がしたけど、それが何かまでは聞き取れなかった。
この二人のことを忘れたくないから、意識が遠のく間中ずっと、
アンジュラ、ルーイン、アンジュラ、ルーイン、アンジュラ、ルーインってずっと名前を呼び続けた。
もしかしたら覚えていられるかもしれないと思ったから。
脳みそに、記憶の奥深く、記憶に刻み付けたかった。
急激に襲ってきた眠気に私の意識は柔らかく包み込まれ飲み込まれ、下に落ちて行くのを感じながら、
私は完全に意識を無くした。