天使みたいな死神に、恋をした
あぁ、頭痛い。なんだこの痛さ。全体的に重いし。
体、なんか動かないなぁ。
腕も足も全部が痛い。
良く見りゃうちの天井じゃないし。
腕に針刺さってたらそりゃぁ痛いよ。
ってことは病院か。
あぁ、そうか。そうだった。
私、バスに乗ってて事故にあったんだ。
そういえばあの女の子はどうなったんだろう。
無事なのかな。
「翠?」
ぼーっとした頭で今までのことを思い返していたところに大声。
その声がうるさくて耳がきんきんした。
文句の一つも言ってやろうと口を開けて言葉を出そうとしたけど、喉が焼けるように痛くて思うように声が出ない。
「みーどーりー! 良かったよほんと! 戻ってくれてありがとう! まじで嬉しい!」
戻ってくれてありがとうって何? 涙も鼻水も垂れ流して泣いてるけど、
なんでそんなに大泣きしてるの。大丈夫だよ私は。
泣きはらしたの? まぶたぱんぱんだよ。
どうしたの? 亮そんなタイプだった?
「今先生呼んでくるから!」
走って病室を出て行った亮を目だけで追う。
だって、ここに、目の前に先生いるじゃん。
「ははは、せっかちな彼氏ですね。でもね、ずっとつきっきりでしたよ。とても心配してたんでしょうね」
くすくすと笑う先生につられて笑おうと口許に力が入ったとき、激痛が走った。
「ああ、無理しないで」眼鏡の奥から優しく笑んだ先生は私のしたまぶたをべろんと下に引っ張った。
頬に触れたはずなのに感覚がない。そこで顔中を包帯で覆われているんだって分かった。