天使みたいな死神に、恋をした

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 長い眠りから目覚めて3週間がすぎ、更に2ヶ月が経ってようやく退院の日を迎えた。



 空は水色に爽やかに晴れていて、気分はとてもいい。

 くーっと背中だけで伸びをして顔を空に向けた。



 長い長い夢を見ていたような気がする。


 どんな夢だったかは思い出せないけど、どう頑張って思い出しても思い出せないんだけど、切なかったし嬉しかったし、何しろ楽しかったって気持ちだけは残ってる。

 不思議なことに、人を好きになった時のあの感覚だけは覚えてるんだよね。

 そんな自分がおかしくて、くすっと笑ってもう一度空を見上げた。

 体もだいぶ良くなった。手足のギプスはまだ取れないけど、普通に生活はできるようになった。しばらくは車椅子だけど。


「っはー。やっぱ最高だね! 外の空気!」

 腕が大きく上げられないから肩まで上げ、顔だけを天に向け、肋骨が痛くならない程度に大きく空気を吸い込んだ。

「きもちいいーーーー!」

「お前あんまり無理すんなよ」

 傍らには亮がいる。

 なぜかあの事故以来すっごい優しい。

 何かやましいことがあるんじゃないかって疑っちゃうんだけど、そこは敢えて言わない。

 医者の話によると、亮はつきっきりでいてくれて(亮のおばさまも一緒に)しかも毎日のように懺悔しながら泣いていたらしい。

 懺悔の内容までは彼のプライバシーに関わるからという理由で教えてくれなかったけど、何かしら改心したんだろう。


 ということにして、深く問い詰めることはしないことにした。


 しかもだ、私の目の前でスマホを花瓶の中の水に沈めてみせた。

 何考えてんだか知らないけど真新しいスマホを私に見せて、ほら、中には誰のアドレスも登録してない! とか言っちゃってる。

 新しいスマホにしたのに前のスマホからデータ移してなかったら友達の番号とかわかんなくなっちゃうじゃん! と言っても、必要最低限の友人だけで十分の一点張り。

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