天使みたいな死神に、恋をした

 バスの事故にあったのを思い出したのはこのすぐ後だ。なんでこうなっているのか分からなかった。まわりを見回したらどうやら病室にいるらしいことが分かる。
 
 夢だか現実だかよく分からない状態の時に、翠を見た気がした。

 翠の後ろにはやせ細っている死神みたいな不気味な男がべったり張り付いて一緒だったのを覚えているけど、あれは夢か? 夢にしてはリアルすぎた。

 しかしまぁ、とりあえずいるわけないしな、あんなのが現実に。

 いたらそれこそ恐ろしい。
 

 翠……


 そういえばあいつは大丈夫なんだろうか。

 
 バスが急ブレーキを踏んだ時、あいつはフロントガラスの方にふっ飛ばされた。

 些細なことで口論になって、あいつは確か一人で一番前の方へ歩いて行ったんだ。

 きっと一番前の席に出も座ろうと思ったんだろう。でも、

 助けなきゃって思ったのが最後、俺もそこで記憶が飛んでいるからどうなったのか分からない。
 
 今俺がここにいるってことは、あいつもここにいるってことだろうけど。
 
 
 身体の隅々にまで意識を向け、痛いところやなんともないところを認識し、首を再度横に向けてみる。


 だめだ、やっぱ、痛い……
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