氷結境界少女Ⅰ
プロローグ
凍りついた大地
激しく、突き刺さるような雨の中。
『誰か……誰かぁ……』
そこがまだ、理想郷と呼ばれる前。
神々はそこに住んでいた。
神々は人間を見下ろして過ごす。
その禁断地域に少女は居た。
雨にぬれて汚れ、破れたワンピース。
短い黒髪は、ぐしゃぐしゃになっている。
『誰かぁ……助けてぇ……』
少女の胸には深い、深い傷。
刃物でえぐったとしてもこんな傷にはならない。