黄昏に香る音色
あたしの音が…KKに響く。

バックが、あたしを包んでくれる。

間違っても、

絶対、助けてくれる。

ピアニストのハービーハンコックが、言っていた。

昔。マイルスのバンドにいたとき、彼は…明らかに間違った音を弾いた。

その瞬間、

マイルスの一音で、バンドは、間違った音を、いかした展開に変わったと。

ビーバップを創った…チャーリーパーカーは、

間違ったら、それを三回やれと言った。

そうしたら、観客は間違ったなんて、思わない。

それが、ジャズだ。

それが、生きた音楽だ。

阿部に、そう言われた。

ステージは、生きている。

演奏を辞めないかぎり、

間違いなんてない。

今、明日香が演奏している音楽は、曲のコピーであって、コピーではない。

自由だ。

みんな…力強い。

安心できる。

初めてのステージなのに、みんなが、支えていてくれるから。

明日香は、自由に音を出せた。

曲が終った。

阿部が、一歩前にでて、頭を下げた。

「今夜、ここに来られた皆さんは…とても幸運です。こんなかわいい女の子の初ステージを、見ることが…できるんですから!」

阿部は、お客に明日香を紹介する。

「香月明日香…トランペッター!次の曲は、バラードです。アイ・フォール・イン・ラブ・トゥー・イージリー…恋するなんて、簡単」







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