黄昏に香る音色
「いえ、別に…」

身を縮ませて、明日香は反射的に、首を横に振り、

急いで、CDを棚に戻した。

高橋と、あまり話してはいけない。

里美が、気にしている。

これ以上、

親友に、いらぬ心配をかけては、いけない。

明日香は高橋に、頭を下げると、

ジャズコーナーから走って、離れた。



そんな明日香の後ろ姿を、見つめる高橋。

棚から一枚のCDを、抜き取った。

「高橋君!」

高橋を探していたらしく、里美は駆け寄ってくる。

「いきなり、いなくなるから…」

高橋のそばで、足を止めた里美は、

高橋の手の中にあるCDに、気づいた。

「高橋君も…ジャズなんて聴くんだ…」

「ああ…」

高橋は、手に持ったCDを、じっと見つめた。

そんな高橋の横顔を、

里美もただ、じっと見つめるしか…できなかった。

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