黄昏に香る音色
あっという間に、放課後になり、

明日香は、渡り廊下へ走る。

夕焼けが、

校舎やグラウンドを、赤よりも赤く、染めていた。

いつもより鮮明な赤は、どこか心に、恐れと違和感を感じさせた。

しかし、明日香のゆうへの気持ちが、そんな一瞬の感覚を、すぐに消し去った。

いや、無意識は感じたかもしれないけど、

明日香の意識は、ゆう以外感じない。

いつもの場所に、ゆうはいた。

息を整えながら、明日香はゆうに近づき、

「今日も…里美が、休んでるの。心配だけど…電話するわけには、いかないし」

最初に出た言葉は、里美に関してだった。

ゆうは、一方的に話す明日香の言葉を、いつものようにきいていた。

しかし、

いつも最後まで、話を聞いているゆうが、いきなり、

明日香の話を遮るように、言葉を発した。

「明日香さん」

いつもより強い口調で…思い詰めたような、ゆうの口調に、

明日香は、言葉を止め…息を飲んだ。

風が、2人の間を吹き抜けた。

まるで、引き裂くかのように。

言葉の強さとは裏腹に、

笑顔が優しい。



「もう会えなくなる」

視線を、

明日香と、合わさないようにグラウンドに向けた。

「明日が、最後だ」

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