黄昏に香る音色
学校は、休んでしまったけど…

里美は、

学校の近くの駅の踏切を、学校側からこえて、少し行ったところで、

待っていた。

高橋を。

駅をこえたところだから、他の生徒の目を余り、気にしなくていい。

明日香も、ここを通るはずがない。

少し俯きかげんに、里美はただ、待っていた。

もう30分ぐらいは、待っていた。

踏切からのなだらかな曲がり角の…電柱のそばで。


やっと、高橋が自転車で来た。

里美は、自転車の気配を感じ、顔を上げた。

高橋に、笑顔を向ける。

しかし、

高橋は、気づかないかのように、通り過ぎていく。

里美は驚き、

高橋の名を、叫んだ。

急ブレーキをかけて、高橋が止まる。

振り返って、里美を見る目が、無表情だ。

近寄ろうとした、里美の足が止まる。



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