黄昏に香る音色
「じゃあね、ママ!また明日」

明日香と里美は、手を振りながら、KKの扉を閉めた。

もう外は、真っ暗だ。

駅まで歩く。

「ねえ。あたしの演奏、どうだった?」

明日香の質問に、

里美は、少し考え込むフリをしながら、

「まあ、いいんじゃない」

えらそうに答えた。

「何!その適当な答えは!」

明日香は、里美にくってかかろうとする。

里美は、少し早足になり、明日香から離れた。

「だって、ここで誉めたら…あんた、天狗になるでしょ」

「ならないわよ!天狗なんて」

「なるなる!絶対に!調子に乗るもの!あたしにはわかる」

明日香は、里美を捕まえ、後ろから、羽交い締めにする。

「ならないから!ちゃんと、よかったといいなさい」

里美は、苦しみながら、

「よかったと、言わそうとしてるところが…おかしい…」

何とか、明日香から逃れると、

里美は、駅まで全力で走る。

「待って!里美」

明日香は追いかける。

「天狗やろう!」

悪態をつく里美。

それは、いつもの二人だった。


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