黄昏に香る音色
着替えを済まし、1人…部室を出て、帰ろうとするゆうの前に、

三人の女が、道を塞いだ。

無視して、横を擦り抜けようとするゆうに、

「待って下さい!」

その中の1人が、声をかけてきた。

谷沢だ。

「あ、あたし…じ、実は…ずっと前から、牧村くんが好きだったんです。だから、あたしと…」

「ごめん」

ゆうは、谷沢に頭を下げた。

そして、谷沢の目を見て、

「俺…好きな子がいるんだ」


もう一度、頭を下げると、ゆうは歩き出した。

後ろで、泣き崩れる谷沢の声が聞こえたが、

振り返ることなんかしない。


ゆうは、さらに後悔した。


好き。

その一言を告げる機会は、いつでもあったはずだ。

いつでも……。



しかし、その機会はもう……永遠に来なかった。


ゆうは、望と会うことはなかったからだ。
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