黄昏に香る音色
次の日。

学校で、里美に会うと、明日香は、CDを渡した。

マイルス・ディビスのラウンドアバルトミッドナイト。

初めて、明日香が買ったジャズアルバム。

夕焼けのように赤いジャケットを見ながら、里美が言った。

「アンタの好きそうな色ね」

「そうかな?」

「…そういえば、最近…あんた…渡り廊下に行ってないよね。なんかあった?」

渡り廊下…もうなつかしい響きだ。

「まさか高橋君と…」


高橋。

サッカー部のエースで、里美の元カレ

渡り廊下から、部活を見下ろし、

明日香はその動きから、メロディーを探していた。

そして、その場所で

ゆうに出会い、大切なことを学んだ。


誰かを好きになること。


明日香は、首を横に振った。

「別に、何もないわ。ただ…あの場所に、いかなくても、よくなっただけ」

明日香は微笑み、

「もう…学ぶことはないから…」


チャイムが鳴り、授業がはじまる。


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