黄昏に香る音色
「あなたまで…入ってくれるなんて…」

滝川は、笑顔で二人を迎え、

「本人の意志を、確認してからと、言ったんだけど…有沢さんが、大丈夫だからと、強引に」

滝川が、申し訳なさそうに明日香に向かって、言った。

明日香は、里美を見た。

里美はソッポを向き、舌を出した。

(はめられた)


滝川は、明日香の手を握り締め、

「最近…あまり人が、入らなくて…メンバーが、足りなかったんだ。ほんと助かるよ」


放課後、連れていかれたのは音楽室。

北館の2階。

正面の窓の向こうに、グラウンドが見える。

さりげなく、里美はカーテンを閉めた。

カーテンの隙間から、

夕日がこぼれる。

右側の窓からは、

渡り廊下が見えた。


部員は、明日香達をいれて、8人のようだ。

部長の滝川は、眼鏡をかけていて、音楽をやっているようには見えない。

真面目そうだ。

担当はベース。


「そういえば…香月君は、外で、音楽やってるそうだね。それもトランペット!」

おおっと、とってつけたように周りの部員が驚く。

里美も驚く。

(おい!)

ツッコミをいれたくなる。

「みんな、聴いてみたいよね」

里美も含め、

全員が大きく頷く。
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