黄昏に香る音色
「もう歌ってはいないけど…教えることはできるわ。明日からでも、教えてあげる。店が開くまでなら、時間があるから」

突然の恵子の言葉に、戸惑い、言葉がでない明日香。

中に入ってあったトランペットは…きちんと、手入れされているからなのか…

ものすごく綺麗に、輝いていた。

シンデレラのガラスの靴は、多分…こんな風にキラキラしてるんだろうなと、明日香は思った。

恵子は、トランペットに見とれる明日香に、自然と微笑んでいた。

あたしも昔は…。

恵子はそんな感傷が浮かんだ自分に、苦笑した。

「ただし…マウスだけは、自分のを、買ってちょうだい」

恵子は視線を、明日香とトランペットから外して、

呟くように言った。

「マウスは…あいつの口づけだから」

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