黄昏に香る音色
明日香がそばにいくと、

何とか起き上がり、

里美は、明日香にしがみついた。


「くやしいよ。くやしいよ。くやしいよ…」

ただ一言を、繰り返して言う里美を、

明日香は、ぎゅと抱き締めた。

「風が…いきなり強く、窓を叩いてるから。窓の外をみたら…明日香のそばに、あいつがいて…」

里美は、その場にあったホウキを持って、飛び出したのだ。

「くやしいよ、明日香。あんなやつを好きだった…ことが、悔しいよ」

泣きじゃくる里美を慰めながら、

明日香も、泣いていた。



ふたりは泣いていた。
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