黄昏に香る音色
渡り廊下の事件から、

数日が過ぎた。

サッカーの部のエースである高橋は、

学校側の判断により、厳重注意だけで終わった。

しかし、浅倉と滝川…特に、里美の父親が、学校に乗り込んできたことにより、

がらっと、学校側の対応が変わり…しばらくは、高橋に、監視がつくことになった。




授業が終わり、

音楽室に向かおうとした明日香を、

止める人物がいた。


麻里亜だ。

「少しいいかな」

麻里亜に、呼ばれるなんて、初めてだ。

警戒する明日香に、

「心配しなくていい。あたししかいないから」

麻里亜は、先に歩きだした。

少し思い詰めたような麻里亜の様子に、

明日香は、ついていくことにした


「本当は、有沢さんとも話したいんだけど…あの子とは合わないから。多分、犬猿の仲ね」

着いたのは、体育館の裏のベンチだった。

夕陽に照らされたベンチ。

「こんなこというのは、おかしいんだけど…」

麻里亜は振り返り、明日香を見、

「あの人のこと、許してほしいの」

< 257 / 456 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop