黄昏に香る音色
放課後。

音楽室では、連日…音楽祭に向けて、練習がなされていた。

浅倉のギターカッティングから、

歌うように、明日香のトランペットが鳴る。

曲は、ホワッツゴーイングオン。

でも、明日香には、満足がいかなかった。

上原の叩くドラムが、納得できないのだ。

目が大きく、小柄でかわいく、ドラムも力強いが…

スウィングしてなかった。

ロックならいいけど、ブラックミュージックには合わない。

何度も指示したが、別に…リズムが合ってない訳じゃないから、理解できないようだった。

音の感触が、違うのだ。


明日香は、トランペットを置いて、休憩した。

因みにトランペットは、kkから持ってきていた。

明日香の隣に、浅倉が来た。

「ごめん、香月さん。あたしたち…ジャズとかR&Bとか…やったことがなくて」

明日香は、トランペットの唾抜きをする。分解し、掃除しながら、

「普段は、皆さん…どういうのを、やってるんですか?」

「普段は、アイコとかハイスタ…」

「あっ!カラオケで歌いますよ」

他愛のない会話の後、明日香と浅倉は、演奏に戻った。

満足しないうちに、

練習は、終わった。



片付けていると、

音楽室の扉が、勢いよく開いた。

里美が、飛び込んできた。

「大変よ、明日香!」

「どうしたの?」

トランペットをケースにしまいながら、明日香は、息を切らせて、真っ赤になっている里美を見た。

里美は、興奮して、

「か、か、和美さんもでるんだって、音楽祭!」

大声で叫んだ。
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