黄昏に香る音色
「こんなの認めない!」

和美は拍手の中、ステージに上がった。

「あたしへの嫌がらせ?あんな女の歌を、うたって!」

近づいてくる和美に向かって、明日香はマイクの前から離れずに、

「嫌がらせでは、ありません。これが、あたしの伝えたいことです」

体を和美の方に向け、真っ直ぐに、見つめた。

「何が未来!馬鹿にしないで!子供とともにいて、成長する?自分から、捨てた癖に!」

明日香のそばで、絶叫する和美。


その時、

誰かが、ステージに上がってきた。

「お前は勘違いしている」

啓介だった。

手に、理恵のCDを持っている。


「啓介…」

啓介は、和美にCDを差し出した。

「明日香ちゃんは…気づいていたようだ」


「こんなアルバム持って来ないでよ。見たくもない」

和美は、CDを受け取らない。

だが、無理やり、啓介はCDを押しつけた。

「まともに、見たことないだろ。未来の作者を、見てみろ」


和美は、嫌々…ジャケットを開いて、何枚かめくり、

作者の文字を見た。

和美の手が、止まった。

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