黄昏に香る音色
「あんたは…あたしと組まないんだから…」

和美は、ステージまで歩いていく。

「あたしのものに、ならないんだったら…いっそのこと…」

和美は、ステージに上がった。

「壊してしまいたいわ」

和美は拳を、啓介のお腹に軽く当てた。

「姉さん…」

しばらく、拳を当てたまま、

和美は黙り込む。



「でも…弟なのよね…。寝取ることもできない…」

和美は少し笑うと、

視線を外し、啓介から離れた。

ステージの端まで歩く。

無言になる啓介。



和美は、クスクスと笑いだすと、

「冗談よ」

啓介の方を向いた。

「姉さん…」

「本気にした?」

啓介は、胸を撫で下ろした。

「冗談…きついぜ…」

安堵の表情をする弟に、

和美は、1通の手紙を差し出した。

「何?」

手紙は、封が開いてあった。

宛名は、河野和美。

差出人は書いていない。

「読んでみて」

戸惑っている啓介に、

和美は促した。

啓介は、仕方なく…手紙を読む。




「これは…」

眉を潜める啓介に…、

「あんたのファンよ」

和美は肩をすくめ、

「あたしとあんたが、付き合ってると、思ってるみたいね」



< 315 / 456 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop