黄昏に香る音色
和美と啓介は、異父姉弟である。

和美は、そのことを公表していない。

手紙の内容に、顔をしかめると、

啓介は、手紙を封筒に戻した。

「これだけじゃ…ないのよ。中傷だけじゃなくて…紹介してくれとか…」

和美はステージから、店を眺め、

「あんたは、もてるのよね。昔から…」

このステージに立つのは、

久々だ。





いつからか…

和美の口座に、年に何回か…お金が振り込まれていた。

振り込んでいるのは、

速水恵子。

それは、物心つく前から、

お金は、振り込まれていた。

誰なのか…調べたら、

和美と同じ…

捨てられた者だということが、わかった。

同情で、金を貰うなんて、許せなかった。

一切、手を付けなかった通帳を持って、

中学生になった和美は、

ダブルケイへと向かった。


重い扉を開けると、

飛び込んできた音に、

和美は動けなくなった。

もうその頃から、年齢を偽って、クラブで歌っていた和美は、

たまに共演するプロにも、感じることができなかった…衝撃が、和美の体を貫いていた。

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