黄昏に香る音色
一生…このバンドで…。

里美の言葉は、嬉しかったけど、

明日香には、帰るべき場所があった。

今は、楽しいお酒の席。

いうべきではない。

明日香は、里美に微笑みを返した。

里美の赤い顔が、一瞬だけ、素面に戻る。

「明日香…」

里美は、持っていた焼酎を、一気飲みすると、

「とにかく、今日は飲めえ!!」

里美は、絶叫した。

明日香は、頷いた。





1時間後、飲み会は終わりを告げた。

「もう一軒、いくぞ!」

里美の号令のもと、ほとんどの参加者が、二次会に向かう。

だけど、明日香だけは別れた。


「明日香!」

小百合が、帰っていく明日香の背中に、声をかけた。

「小百合!いいんだよ!」

里美が言った。

「で、でも…」

「あいつは…。あたし達とは、違う。こんなところで、終わるやつじゃないのさ」

里美は、明日香の背中を見送りながら、

自然と流れた一筋の涙を、腕で拭った。

「止めちゃ…駄目なんだよ。わかってるだけど…」

うんと…こたえてくれることを、少し期待してしまった。


「行くぞ!みんな!」

里美は、明日香と違う方向に歩き出した。

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