黄昏に香る音色
音が飛び込んでくる。

この音なの…。

あたしが、ずっと聴きたかった音は。

聴いただけで、あたしにはわかる。




啓介の音。

カウンターの中に、恵子がいた。

恵子は微笑み、

「お帰りなさい。明日香ちゃん」

「ただいま!ママ」

店内に流れる音が、止まった。

ステージにいる人達。

阿部、原田、武田。

そして、啓介。

啓介の優しい笑顔を見た瞬間、

明日香は走り出した。

そして、啓介に抱きついた。

「ただいま…啓介さん」

「おかえり、明日香」

明日香の顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。

せっかく綺麗に、化粧したのに。

あたしはまだ子供。

でも、

こんなあたしを待っててくれたあなたが、あたしは…。

「あたしを…あなたのバンドに入れて下さい」

啓介は、明日香を抱き締め、

「もう入ってるよ。俺のバンドに」

明日香と啓介。

安らぎと暖かさを感じながら、

二人は二人の音を奏でる。

それは不器用で、まっすぐで一途な、

そして特別な音。

二人の音。

これからの音。

未来へと続く音。




第二部完。
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