黄昏に香る音色
高校は、中退した。

父親が家を出ていき、

一人残された母は、

いやに潔癖に、ヒッステリックになり、

紗理奈に、きつく当たるようになった。

(どうして?)

逆に、

兄には優しくなり、甘かった。

もともと内向的だった兄は、その甘さに甘え、

家に、引きこもるようになった。

所謂、オタクからニートになった。

それでも、家にいてくれる兄を大事にした。

紗理奈にきつく…

きつく当たった。

自分にだけ…どうして…きつくあたるのか…。

最初は、理解できなかったけど、

ある日、

紗理奈は気づいた。

母は、

女を憎んでいた。

自分から、旦那を奪ったのは、若い女。

紗理奈は背が高く、早熟していた。

そんな紗理奈を、汚らわしい体と、

母親が罵り、

口に出したとき、

家をでることにした。

家出だった。

できるだけ遠く、

有り金全部を使って、

十六の時、この街に来た。

この店に、面接に来たとき、

年齢も名前も嘘を書いた。

くわしくきいてきたり、確認するところは、

すぐにでた。

見た目が、十六に見えなかったことと、

その日はたまたま、店は女の子が足りなかった。

大した確認もなく、入店となった。

簡単なドリンクの作り方だけ教えられると、

すぐに席へとつかされた。

店長が、ボーイに言った。


「〜さんは素人ぽい人が好きだから」

少し小太りの中年のおっさんの隣に座り、

ドリンクをつくる。

適当な会話が終わり、

おっさんが、紗理奈にすり寄ってきた時…

ステージでは、専属のバンドが演奏を始めた。

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