黄昏に香る音色
演奏を、ぼおっと聴いていた。

その間、

おっさんが、ずっと体を触っていたけど、

あまりいやとは、思わなかった。

母親に、汚らわしい体と言われたからか…

それとも、

男に、免疫がなかったからか…。

いつのまにか、

指名延長が取れていた。

(楽かな?)

何の感覚もなく、

紗理奈は、夜の店で過ごした。


体を触らしてることに、

他の女から文句がきたが、

「ああ…だめなんだ…」

と、無表情にこたえる紗理奈を…おかしいと思ったらしく、しばらくしたら…

何も言わなくなった。

そして、

タバコと酒を覚えた頃、

知らない間に、

男と住んでいた。

店の寮は、ワンルームマンションだったが、荷物もなかったし、何とか住めた。

相変わらずの店で、

演奏が始まると、

紗理奈は、ぼおっと聴いていた。

その時、触り放題になる。

断るすべも、あしらい方も覚えたが、

音が流れるときは、

なぜかステージに集中し、他はどうでもよくなった。


ある日。

紗理奈は、衝撃を覚える。

ステージに立った一人の歌手に。

その歌手は、

昔、このステージで歌っていたらしい。

今回オーナーの代が、変わるから、たっての願いで

特別に来てくれたらしい。

まだ新人の歌手は若く、

紗理奈とあまり変わらないような気がした。

赤いドレスを纏った、あまりにもきれいな姿。

歌手の名は、

河野和美。


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