黄昏に香る音色
何度かお客さんと外で、

逢ったことはあるけど…

こんなにあっさりと、帰らされたのは、初めてだ。

大体は、何とか長くいようとするのに…。

これじゃ…本当に、買い物に付き合っただけじゃない。

わざわざ休みに出てきて。

(変なやつ)

紗理奈は、毒づきながらも、

妙に、牧村のことが、

心に残ることになる。

一応…携帯番号だけは、交換しておいた。

番号の書いた紙を握りしめて、紗理奈は改札に背を向けた。





一緒に買い物してから、一週間後の日曜日。

紗理奈は、牧村の携帯に電話した。

それは、

CDの感想を伝えるため…。


「ものすご〜く暗かった。あと…言葉が英語で、全然わからない」

紗理奈の感想に、

受話器の向こうで、大笑いする牧村。

何とか笑いをこらえて、

「河野和美だって、英語だろ」

「彼女は、特別」

しばらく会話は続いた後、

紗理奈は言った。

「また…今度お茶でもしない?」
< 349 / 456 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop