黄昏に香る音色
次の日曜日。

また、駅前で待ち合わせ、地下のカフェでコーヒーを飲む。

そして、別れる。

ある意味律儀だ。

そして、また

来週会うことを決めた。

そんなことの繰り返しを、続けた。

わかったことは、

牧村が音楽に詳しいこと。

キャバクラとか、普段はまったくいかないこと。

あの日は、知り合いに無理やり連れてこられたこと。



会うたびに、紗理奈の店の愚痴も、真剣にきいてくれた。

それが単純に、嬉しかった。

単なる話をするだけだが、

口説くとか、他の男のようなやらしさがなかった。


そんなことを、何ヶ月か続けた…ある日。

平日の水曜日。

めずらしく、休みとなった紗理奈は、

夕方、牧村の携帯に電話した。

仕事中。

とらないかもしれない。

少しドキドキしながら、

携帯を鳴らす。



「はい」

いつもの声が聞こえた。

嬉しくなる。

「お仕事中、ごめんなさい」

「いいよ。今、暇だから…どうかしたの?この時間にかけてくるなんて…」


紗理奈は、唾を飲み込んで、

「あのお…今日の夜は、予定とかありますか?」

「いや、ないよ」


紗理奈の声が上ずる。

「暇でしたら…お仕事終わったら、お茶でもしませんか?」

「いいよ」

あっさりと、OKだった。

「じゃあ、いつの場所で」

牧村の終わる時間だけ確認して、携帯を切った。

少しガッツポーズを取ると、時計を見、

紗理奈は、出かける準備をしだした。


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