黄昏に香る音色
「どうだった?」

紗理奈の問いに、牧村は、

「よかったよ。うまかった」

感心したように、何度も頷いた。



二時間くらいいて、紗理奈と牧村は、店を出た。

歩きだし、

しばらくして

紗理奈は足を止めた。

振り返る牧村。

「もう帰る?」

紗理奈がきいた。

牧村は、時計を見、

「…じゃあ、もう一軒いく?」

「どこか連れてってよ」

紗理奈の言葉に、苦笑すると、

牧村は促す。

「行きつけのBARがある…いく?」

「うん」

紗理奈は、素直についていく。

カラオケのすぐ右を曲がると、商店街がある。

しばらく歩き、

二本目の十字路を、左に曲がると、

雑居ビルがあった。

そこの三階に、

BARはあった。

BAR Evil。

エレベーターに乗り、三階につく。

廊下には、数多くの扉が並び、

奥から三番目にあった。


多分、一人では来れない。

木製の扉を開けると、

ジャズが流れてきた。

店内は入るとすぐにカウンターがあり…その中には、

一人の女がいた。

「いらっしゃいませ!」

牧村は、紗理奈をカウンターに促し、自分も座った。

「おはようございます。先生」

二人の前に、コースターが置かれる。

「先生は、やめてくれと言ってるだろ。香月さん」

照れている牧村。

「あら。先生だって、香月さんじゃないですか」

「あ、あすかさんとは言いにくい…」

「あたしは、言えますよ。ゆう先生!」

「やめてくれ!先生はいらない」

カウンターにいる女は、

香月明日香だった。


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