黄昏に香る音色
次の日。

出勤が、遅番になったため…紗理奈は、Evilに向かった。

いざとなったら、

お客と店近くで待ち合わせて、そのまま、

同伴出勤にしたらいい。


三階に上がり、扉を開けると、

カウンターから、小太りの小柄な男が顔を出した。

「いらっしゃいませ」

昨日いなかった人。

マスターだろう。

カウンターに座り、ビールを注文する。


「こちらは、はじめてですよね」

マスターはコースターを出し、ビールを置いた。

「いえ」

紗理奈は一口飲むと、グラスを置いた。

奥にお客が一人。

このお客も、昨日はいなかった。

ニヤニヤ紗理奈を見ている。

紗理奈はマスターを見、

「明日香さんは…今日、いらっしゃらないのですか?」

マスターは少し驚くと、すぐに営業の顔になり、

「世話になってたBARの…ママが倒れたらしく、病院に寄ってから、来ますので…少し遅れると思います」

「そうですか」

紗理奈はまた、ビールを飲んだ。

「ところで…こちらへは、誰の紹介で、来られたんですか?」

ビルの三階のBAR。

女が一人、ふらっと入ってくるものではない。

マスターの質問に、紗理奈はグラスを置き、

「ゆうさんと一度、来させて頂きました」

その言葉に、客が反応した。

「ゆう!ゆうってあれだろ〜マスター」

お客はさらにニヤニヤ笑い、

「明日香がいたら、必ずくるやつ」

紗理奈を見ながら、

「明日香のことが、好きなやつだろ!」



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