黄昏に香る音色
「この国は、自由の国だ。しかし!誰もが、自由になれることはない。お前達…黄色に、自由があると自惚れないことだ」

男は、体を震わせた。

和美は、席を立った。

「あたしの色は、ナチュラル。黄色ではないわ」

男の震えが、強くなる。

「ジャップが…言葉で言っても…わからないようだな」

和美が、背をむけて歩き出すのと、

男が、立ち上がるのは、

同時だった。

バンド仲間が気づき、男に飛びかかったが、




遅かった。

凄まじい銃声が、店内に轟き、

その後、

悲鳴があがった。

後ろから、打たれたのだ。






即死だった。


享年25歳。

もうすぐ誕生日だった。

真紅の歌姫といわれ、世界を飛び回った歌手は、

母と同じ国で、

命を落とすことになった。


赤い血に染まり、

倒れる和美は、

散った…花びらのようだった。

と、目撃者は後に語った。

しかし、

それは自ら…散ったのではなく、

無残にも、むしりとられたのだ。

赤き宿命とともに、散った花びらは、

もう…

美しく咲くことはない。

記憶の中でしか…。
< 367 / 456 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop