黄昏に香る音色
少年は、左横の山の向こうに沈んでいく…夕陽を見る為、明日香に背を向けた。

太陽は、見つめられないけど、

沈む夕陽は、見つめられる。

「いつも…この場所にいたね。ここから、グランドを眺めていた」

沈み夕陽に照らされ、逆光の中、少年の黒い制服が、浮かべ上がる。

「いつも、ここにいた。ぼくも、いつも…ここに来たかったんだ」

そう言うと、今度は体を明日香を向け、少年は、

軽く会釈した。

顔を上げた瞬間の少年の微笑みは、

やはり、

少し泣いているように、明日香には感じた。

少年は、そんな表情を隠すかのように、空を見上げた。

「やっと、ここに来れた…。あなたと、話せるんだ」





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