黄昏に香る音色
ゆうは家に帰ると、夜遅くまでギターを触っていた。

あまりうるさくならないように、静かにコードだけをなぞっていた。


少し疲れて、ゆうはベットに横になった。




寝てしまったらしい。

目が覚めると、深夜の2時半だった。

メールが来た。

携帯を取り、メールを見ると、紗理奈からだった。

紗理奈からのメール。

そこには、

この街に来るまでの出来事が、書いてあった。

母親とのこと。

家出。

しばらくメールを見つめていたゆうは、紗理奈に電話した。

紗理奈は泣いていた。

しばらく泣き声を黙って、ゆうは聞いていた。


「そんな女なんだ」

紗理奈の言葉。

ゆうは、ゆっくりと話し始めた。

「今…ギターの練習してた…まだ下手だけど、もっとうまくなって、ライブハウスとかでやりたい…」

ゆうは、言葉を噛み締め、
「お互い、もっとうまくなったら…招待しょう。お母さんを」


しばらくの間。

「うん」

紗理奈が、電話の向こうで頷いた。


「紗理奈…好きだよ」

ゆうは言った。

「ちゃんと、言ったことなかったな…紗理奈という女が好きだ」

「ゆう…あたしも好きだよ」

「よかった」

「ゆう…あたし…守本幸子っていうの…本当は」


「だから…二人のときは、幸子って呼んでほしい。あたしの名前だから」

「わかった…幸子」

「ライブだね。もうすぐしたら」

「うん。最初の一歩だ」

「うまくなろうね」

「早くうまくなろう」


「おやすみ。ゆう」

「おやすみ。幸子」

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