黄昏に香る音色
何日か過ぎ、ライブ当日となった。

女の子が出勤し、着替える前に、店に入り、

ゆうは、ギターのチューニングを合わせていた。

幸子は、憧れの赤を基調にしたドレスを着ていた。

まだ…明かりのつかないステージの上。

心が踊る。


開店前の朝礼が、始まる。

幸子も参加する。

緊張してきた。

朝礼が終わる。

店が始まる。

それは、幸子とゆうの始まりだった。


開店とともに、何人か飛び込んでくる。

幸子の知ってるお客が、次々と入ってくる。

いっぱいには、ならなかったが、3分の2は埋まってきた。

開店から三十分。

BGMが止まり、アナウンスが流れる。

「NO.21紗理奈におけるライブが始まります。短い時間ですが、お楽しみ下さい」

ここでは、あくまでも幸子がメインだった。

ゆうの名前は呼ばれない。

幸子がステージに上げる。

照明がつき、ライトが幸子を照らす。

拍手が起こる。

まばらだが、気にしない。

幸子は興奮と、嬉しさでいっぱいだった。

あたしが憧れた場所。

光が包むところに、

今立っているから。


ゆうのギターが、イントロを奏で、

エリック・クラプトンのチェンジ・ザ・ワールドが始める。

幸子は、マイクを握り締めた。

静かに、

マイクを口元に近づけ、歌い出す。

ハスキーな歌声が、

店内に響き渡った。

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