黄昏に香る音色
バンドメンバーを見送ると、もう時間がなかった。

恵子は、帰っていいと言ってくれたけど、まだ片付けが終わってない。

タクシーで帰ろうと覚悟した時、

恵子が言った。

「ここに泊まろか?」

恵子も、阿部に送ってもらっていた。

車はあったが、

今、運転するのは危なかった。

お客さんに飲まされたのもあるが、体によくなかった。

もともと住んでいたし、たまに疲れた時は、泊まっていた。


店ができた時、二階は…恵子と健司の新居だった。


明日香はコクッと頷くと、素直に泊まることにした。

片付けが終わり、

明日香はステージを眺めた。

誰もいないステージ。

明日香が、歌手として、トランペッターとしても、

初めて立ったのは、この場所だった。


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