黄昏に香る音色
子供の笑い声。

まるで…歌っているよう。

明日香は、ゆっくりとメロディーを口ずさむ。

「香里奈は…歌が好きなのね」

明日香が微笑むと、香里奈も微笑む。

小さな手で、明日香の頬に触れる。

その様子を見守る啓介。

かつての自分と恵子を、重ねながら。



「明日香。いつ活動を再開するんだ?問い合わせが、殺到してるぞ」

啓介の言葉に、明日香は、香里奈をあやしながら、

「活動ならしてるじゃない。いつも歌ってるわ」

啓介は呆れた。

「ここだけだろ。ここ以外で歌っていない」

「仕方ないでしょ。香里奈は、まだ歩けないんだから!あたしは、香里奈が歩ける範囲までしか動かないの」

啓介は肩をすくめ、

「アメリカにいくのは、いつになることやら」


「あら、いくわよ。いつか香里奈と2人で」

明日香は、啓介を見ずに、こたえた。

「お、俺は!」

「まあ、香里奈次第ね」

明日香は悪戯ぽく笑うと、香里奈の為に歌う。

香里奈は、ああっと歌に合わせて、反応している。

「香里奈は、いい歌手になるな。大きくなったら、お父さんと、新しいダブルケイを組むぞ」

啓介は、香里奈の頭を撫でる。

「そんなことわからないわ。啓介より、彼氏と組むかも」

「何ぃ!俺より、うまいやつなんていないぞ」

「香里奈。自信過剰の男はだめよ」

明日香が、香里奈に言い聞かすように言うと、

香里奈は笑った。
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