黄昏に香る音色
何となく、誘われたコンパに、恵子はいた。

人々が騒ぐ熱気と、グラスの音。

そして…タバコの匂い。

男達が優しく、女を扱い、

笑顔で誉めている。

(そう…この時代からかしら?)

男は下心を、優しさにかえて、女を口説くようになったのは…。

それまで、高校生だった女達は、

面と向かって、同年代の男にやさしくしてもらったことがない。

それが、コンパなどで会う男は、

まるで、女王様のように扱ってくれる。

それは、嬉しくて楽しいに決まっている。


高校の時より遥かに…恋人ができる確率は、上がる。

「速水さん。飲み物、おかわりする?」

愛想笑いを浮かべる男に、

恵子はタバコをつけ、

ちらっと見、

タバコを吹かす。

笑顔の男の額が、ピクつく。

恵子はゆっくりと、笑顔を見せ、

「まだ大丈夫です」

やんわりと断った。

「あっ…そう…」

男は諦めて、隣にターゲットを変える。



タバコを、奥まで吸い込むことは、できなかったけど、

年齢よりも、大人びて見える恵子は、

タバコにより、さらにミステリアスな雰囲気を、醸し出していた。

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