黄昏に香る音色
「こんな時間までいるなんて…珍しい」

里美の目の前に、不敵な笑いを浮かべた麻里亜がいた。

麻里亜は偉そうに、腕を組み、里美を見下ろしている。

「雪野…」

里美の顔色が変わる。

さっきまでの、どこか恥じらっていた里美と違い、いつもの勝ち気な里美になる。

麻理亜は、そんな里美を無視して、顎を上に向けた。

笑みは絶やさずに、

「あらあ〜香月さんも。今日も、いつもの場所で、御観覧で〜」

明日香は、降りる足を止め、麻里亜を見た。

麻里亜はクスクス笑い出し、

「香月さんも…。サッカー部の練習を、観たいんでしたら〜。近くで、あたし達といっしょに、観たらいいのに」

麻里亜は、すぐ後ろにいる取り巻き仲間に、振り向き、

「ねえ〜皆さん!」

「そうよねえ〜」

嫌みぽい麻里亜の言い方に、他の取り巻きも、大袈裟に頷く。

麻理亜はニャッと笑い、大袈裟に何度も頷いた。

「てめえ!一体、何が言いたい!」

里美は、麻里亜に食ってかかろうとするけど、

麻里亜は、そばをすり抜けた。

そして、階段の前に立つと、麻里亜は、階段の中段くらいにいる明日香を睨んだ。

「あまり遠くから、ストーカーみたいに見られてると…迷惑なのよね」


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