黄昏に香る音色
「里美!」

明日香は急いで、階段を駆け下りたけど、

里美は、渡り廊下の下をくぐり、一目散に走り去った。

「あら!逃げた!」

麻理亜の馬鹿にしたような言葉に、取り巻きが爆笑する。

明日香は、走るのをやめ、麻理亜の前に立つ。

麻里亜は、そんな明日香を思いっきり睨む。

「何か…文句でもありますの?」



パチン。

激しい音がした。

一瞬にして、周りの笑いが凍り付く。

明日香が、麻理亜に平手打ちをしたのだ。

「な…」

痛みより、今起こったことが、信じられないように、目を見開く麻里亜に、

明日香は一言、こう言った。

「最低」

麻里亜を睨む明日香の迫力に、気負とされ、

麻理亜は言葉がでない。

下手に何か言ったら、もっと殴られる。

普段温厚な明日香からは、感じられない……激しい殺気。

麻里亜は、無意識に後退った。

明日香は一気に、振り抜いた手を下ろすと、

もう麻里亜たちには、目もくれずに、駆け出した。

勿論、里美の後を追う為に。

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