黄昏に香る音色
渡り廊下をくぐり、右に曲がると、長い直線の道が、正門まで続いている。

里美は、もう正門を通り、学校を出たみたいだ。

明日香は、全力で走った。

正門を走り抜け、

左に曲がり、駅へと向う一本道を、ただひたすら走る。

駅までは、300メートル。

明日香は走りには、自信があった。

右側に並んだ家屋を越えると、マンションの3階位の高い土手があり、

そこから、風が強く、吹き抜けてくる。

風に髪がなびき、セットが乱れようが、今の明日香には、関係なかった。

夕陽はもう沈んだ。

辺りは、すぐに暗くなってきた。

踏み切りが見えてきた。

閉まっている。

いつも嫌いなこの音も、今日は救いの音に聴こえた。

ここの踏み切りは、開かずの踏み切りとして、有名だ。

いた。

まだ、踏切を渡れない里美が、遮断機の前に立っていた。


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