黄昏に香る音色
「里美!」

やっと里美に、明日香は追い付いた。

息を切らしながらも、明日香は反射的に、里美を

抱き締めようとする。

だけど、

明日香の手を、里美は擦り抜けた。

「里美…」

踏み切りが、ゆっくりと開いていく。

俯いたまま、里美はとぼとぼと歩きだす。

その隣を、心配そうに、里美の横顔を見つめながら、明日香が歩く。

里美は無言で、踏み切りを渡り切った。

後ろで、また踏切が鳴りだし、ゆっくりと閉まっていく。

閉まり切る前に、里美は足を止め、

明日香の顔を見ずに、話しだした。


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