黄昏に香る音色
「早いとか、どうでもいいの!どれだけ深く、どれだけ好きに、なったのか…。どれだけ真剣になれ、どれだけ不安になり、どれだけ悩んだのか…」

いきなり熱くなった恵子の言葉に、唖然としている明日香。

恵子は、明日香を見つめ続け、

「あたしなんか…絶対に、あの人に、振り向いて貰えない。あたしの友達は、かわいくて、素直で、女の子らしい。かなわない…絶対に」

里美の気持ちを代弁するような恵子の台詞に、明日香は思わず、カウンターから立ち上がった。

「あたしなんか、かわいくないです!」

恵子はもう…

熱くなることも、ため息をつくこともなかった。

ただ新しい煙草を取り出すと、火を点けた。


「明日香ちゃんの次の練習曲…決まったわ」



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