黄昏に香る音色
唐突に、

恋するなんて簡単が、かかる。

あっと呟き、明日香はジャケットから顔を上げると、目を瞑り、ただ流れる健司のトランペットの音に、身を任せた。

恵子の歌声が、響く。

明日香には、

恵子の歌声が、恋するなんて簡単には、聴こえなかった。

むずかしい。

そんな単純な言葉では、ないような気がした。

難解で複雑でもないけど、簡単でもない。

勿論、普通でもない。

この曲はタイトル通りの、単純な意味じゃない。

単純に、訳したけど…それは、正しくないんだ。

でも、今の明日香にはわからない。

うっすらとしたイメージは浮かぶけど…それには、痛みも切なさも感じない。

それを感じさせるだけの経験が、明日香にはなかった。


だけど、もしかしたら…。
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