黄昏に香る音色
何事もなく、

放課後を迎えた。

里美は…

用があるらしく、先に帰ると一言告げると、そそくさと教室を後にした。


麻理亜達は…

やはり、昨日…職員室で、何か言われたらしい。

時折、明日香を睨んでいたけど…直接は、何も言ってこなかった。

麻里亜達なんて、どうでもよかった。

ただ出ていく時の、里美の様子だけが、少し気になった。

でも、あまり気にし過ぎても、仕方がない。

明日香は気を取り直し、教科書を鞄に詰め込むと、

教室を飛び出し、走り出した。

渡り廊下へ。


ただ無性に、会いたかった。

(会いたい!ゆうに!)

こんなに、人に会いたくなるなんて、初めてだ。

この気持ち…

何かはわからないけど。

そう…明日香にはまだ、

それが何なのか…これまで経験したのない湧き上がる気持ちを、説明することが、できずにいた。

それはまだ、痛みも悲しさも伴っていない…始まりなのだから。


< 66 / 456 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop