黄昏に香る音色
いつものように、夕陽に照らされた…指定席に、ゆうはいた。

「やあ」

少し手摺りに、身を寄りかかりながら、明日香に向かって、見せた…やさしい笑顔。

明日香は、笑顔を見ただけで、安心し…力が抜けた。

そして、泣きそうになった。

あれほど好きだった夕陽の輝きも、今の明日香には、見えてなかった。

ただ目の前にいる人だけが…明日香には、特別だった。


「どうかしたの?」

ゆうは、視線をグラウンドに戻した。

「何か…悲しそうだから…」

ゆうには、今の明日香を正視することができなかった。

赤く輝く夕陽も、学校内に残る生徒たちの熱気も、

渡り廊下の2人には、関係のない世界となっていた。

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