ヒミツの恋【短編集】
どうして…?




忘れかけてた愛しい人の声…




振り向けずにいる私の耳に近付いてくる足音…




『また…一緒に図書室からの夕日、見ようよ…。
俺の髪が綺麗って言うだけじゃなくて、好きな時に触っていいからさ…』





私は首を横に振ることしか出来ない。





『…どうして?』





掠れた声で尋ねられて胸が締め付けられる。





どうしてって…そんなの決まってる…。





「…ネクタイ…」






『え?何?』





「そのネクタイの子と見ればいいじゃないっ!!…彼女なんでしょ…?」





渉と一緒に夕日を見るのも…髪に触れられるのも…私じゃない…。





そのネクタイの子とする事でしょう?





『…ネクタイの持ち主とならいいって事だよね?』





渉の言葉がグサリ胸に突き刺さる。
…私に聞かなくてもわかる事じゃない。





震える両手を胸の前で握り締めてゆっくり頷いた…
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