ヒミツの恋【短編集】
手を離されて、俯く私の前に渉の手が見えた。




その手に乗る渉のネクタイ。





…いいの?





もう一度…私が持っていても…いいの?





戸惑う私は中々受け取れずにいた。





『…もう信じてもらえない…よね…。』





渉の手が震えてる事に気がついた。





顔をあげると、渉は見たことのない位悲しげな顔をしてる。





「…私で…本当にいいの?」





ピクッと体が動く渉はまだ悲しげな顔で…けれど…私の目をしっかりと見つめて





『真由美じゃなくちゃ…ダメなんだよ…。』






って言ってくれた…。





ゆっくりと手を延ばしてネクタイに触れる。





そして渉のネクタイを受け取り…渉を見つめて聞いてみた。





「つけても…いい?」
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